「晴樹君、詩音。」
もう我慢できない。言って楽になりたい。声に反応して二人の視線が私を刺す。
「声のこと、どう思う?」
「犠牲者のこと?」
「うん。選べって。二人ともどうするつもりか知りたい。」
問題に直面する。私は我慢できない。さっきの詩音の「犠牲者。」という単語で私は彼らに疑いを持った。その疑いを消したい。そして死にたくない。信じたいんだ。楽になりたい。

沈黙。とてつもなく長い思考の時間。

「犠牲者を選ぶ?」
詩音が口を開いた。ひどくその言葉が冷たく聞こえたのはきっと気のせいじゃない。
「誰を?」
晴樹君が問いかける。私は目を伏せた。涙が溢れる。嫌だ嫌だ。犠牲者なんか選びたくない。殺したくない。死にたくない。
「・・・嫌。」
嗚咽をこらえて精一杯の主張をした。二人の顔は見たくない。
「・・・じゃあ、どうするの?」
詩音の的確な言葉がまた問題に回帰させる。

答えが出ない問題。
犠牲者って言葉が極めて適切すぎる。