「詩音。もうすぐ夜だね。」
「うん。そうだね。」
無愛想に対応する時の詩音は大抵考え事をしているとき。
「何かいい考え浮かんだ?」
「ううん。まだ。」
「・・・そうだよね。」
「美穂は?」
夢は現実感がないから夢。この世界は?誰も居ない世界。頭に響いた「犠牲者」を選ぶこと。駅で見たあの時刻表。極めて非現実的なのに。
この悪夢から覚めるためには素直に声に従うべきと思ってしまう。
そう考えると怖い。隙あらば殺されそうで。私は愚かだ。長い付き合いの友人を信用できないのだから。大切で、大好きな友人なのに。疑ってしまう。

殺されるのではないか、と。

「何も。」
「そう・・・。晴樹君は?」
「俺も、どうするべきかわからない。」
本心は、疑いあってるんじゃないの?二人とも。それを自分が話せば、自分が疑われるから話さないだけで。