真柴弘樹は11歳の若さで死んだ。
彼は生まれて誰にも必要とされなかった。
むしろその存在を疎まれた。
父親はいない。
母親は彼が6歳の時に彼を捨てた。
彼は施設にも捨てられなかった。
本当に捨てられた。
山の、しかも奥深く。
最後の母親の言葉は「ここで生きていきなさい。」。
何を意図したのかは未だに理解できない。
が、6歳の子供が山で生活していけるはずがない。
「ここで死になさい。」
が本意だったのだろう。
彼は五年の間、一人で生き抜いた。
彼は世界を恨んだ。
彼はヒトを恨んだ。
彼の味方は己の体しかなかった。
自分が食べ物を食べればそれは自分の力になる。
自分の力が尽きない限り生きることができる。

いつか世界に復讐をしに行くために。

が、その思いは簡単に途絶える。
猟師に撃たれたのだ。
熊と間違えて。
彼は薄れ行く命の中決意する。

俺はヒトを心から恨んでいる。
俺はヒトを許さない。
ヒトが居なければまだ、俺は生きることができたのに。