「兄さん!どこにいるんだ!」
血走った目と強く握り締めている短銃は正に狂人という名がふさわしい。祐は俺を探している。俺を殺して生きるために。弟はいい奴だ。こんなことがなければ。ただ、ヒトより少し臆病なだけなんだ。殺したくない。できるものなら撃ちたくない。けど・・・このままじゃ・・・・話し合いもできない。自分が死ぬのを待つだけだ・・・。
安全装置をはずし狙いを定め・・・・・引き金を引く。ブローバックしたスライドと飛び出した薬きょうが何故かスローモーションに見えた。
「ぎゃああああああああああああ!!!!!!!!!!」
ドン、という破裂音と叫び声。俺が放った弾は太ももに命中した。祐は転げまわる。
「祐!」
自分のした行為で祐は苦しんでいるのだ。なんてことをしたのだろう。俺は罪深い。祐の足は真っ赤だ。抑えてる手も赤い。血液で。
「・・・なんで・・・なんで・・・。」
「祐!聞いてくれ・・・。」
撃った事実は変わらない。罪悪感が支配する。・・俺が殺されてやれば・・・・痛くなかったろうに。何故。撃ったんだ。俺は。
「兄のくせに・・・・撃ちやがったなぁ。」
漏れる憎悪の言葉。少し、思考が白くなった
「俺のために死ねよ!足・・・撃ちやがって!このやろう!殺してやる!」
傷ついた足を引きずり、祐は銃を手に取ろうとする
「俺が・・・俺が生き残るんだ!おまえなんか死ねよ!はははははははははははははは!」
・・・・・祐って奴だったんだ。こいつは・・・・・もうヒトじゃない。獣だ。
簡単だ。さっきと同じように狙いをつける。・・・・弟だったモノの頭に。
「・・・え?」
モノが固まった。見開いた目は憎悪ではなく。恐怖が支配していた。違う。恐怖も憎悪も狂気だ。祐は狂気に支配されたんだ。
「ごめんな。俺もすぐ行くから。待っててくれ。こんな兄ちゃんでごめんな。」
銃声が響いて穴が開いた。

弟に。