―学園長室―
机と向き合い頭を抱え込んでいた。
そして、少し顔をあげてある写真を見つめた。
学園長がキルと誰を抱きしめている。
両側には男女がいた。
抱きしめている片方の顔は光でよく見えない。
「何処に行ってしまったんですか…」
その時ドアをノックしてキルが入って来た。
「もうすぐ見つかりますよ」
「そうですかね…」
元気がない。
それほどまでに行方不明になった人が大事だったという事。
「やっと完成したんですけどね」
手には一枚のメモリーチップが握られていた。
その時、青葉学園に忍び寄る二つの怪しい影。
全身を黒いマントで隠し、右側の顔に仮面。
左目の下にはダイヤの様な紫色の模様。
帽子も黒で羽が付いている。
もう一人は対照的に全身が白いドレス。
左側の顔を花で隠し、髪は腰ほどの長さはあるツインテール。
帽子は黒で白いリボンと白い羽。
右目の下には同じくダイヤの様な紫色の模様。
青葉学園に着くと辺りをキョロキョロと見始めた。
お互いに何も喋らない。
気味が悪い二人だ。
「主様の命により任務を遂行」
「我が主は絶対」
二人共が口にした言葉。
″主″
それは一体誰だろう。
学園長の異変に少し戸惑いを感じる寮生達。
謎が多い学園長だから尚更恐ろしい。
何かを企む前触れなのだろうか。
「学、園長」
クラウンがボソッと呟いた。
何かを考えるように静かに。
「如何したんでしょうね…」
「気になるけど深く追求すると厄介な事になるな」
それは皆が(姫以外)体験済み。
だから何も出来ない。
その時、クラウンは頭を少し抱えた。
脳裏に残像する映像。
誰かが笑いかけている。
知らない顔なのに、その笑顔は姫達が見せてくれるような温かい笑顔。
黒で白。
白で黒。
遂になる存在。
迫り来るのは何の為?
護るべき者があるから。
stage16 黒と白
+*+
青葉学園、四葉寮。
いつもの様に姫達はのんびりしていた。
だけど、クラウンは今だに何かを考え込んでいる。
姫達は心配するがクラウンは大丈夫と言うだけ。
でも、確実に何かがおかしいとは皆が勘付いていた。
けれど何も言わずにそっとしている。
心配をかけようとしていないのに、心配していたら相手は逆に…
だから、そっとしていた。
静かに忍び寄る二つの影。
真っ直ぐ寮へと向って来ている。
黒と白の二人組。
「推測だが此処にいるはず」
「標的を捕らえ主の元へ」
「「待っていろ。クラウン」」
二人の口から出た言葉。
捜していたのはクラウンだった。
主とはクラウンの創り主である”amu”と言う者だろう。
だけど、捨てたのに今更連れ戻す必要はないはず。
動いていると何処かで知ったから、壊す為に連れ戻す。
そういう考えも出来る。
となると、この二人も主と言っているからアンドロイドという事になる。
創り主の命令に忠実に従う。
まるで操り人形。
突如二人の目がチカチカと光を放ち始めた。
藍色の光。
その瞬間、クラウンは頭を抱え出した。
流石に皆も心配して駆け寄る。
「如何したんですか!」
「データ乱入。黒ト白ノ侵入者」
黒と白の侵入者とか、きっと先程の二人。
目が突然光りだしたのはこれをしていた為だろう。
直接クラウンのデータにアクセスし、情報を加えた。
そして、自分達が来ている事を相手に知らせる。
知らせていてもクラウンは以前の記憶を失っている為誰かは判らない。
しかし、記憶を失っているという事を二人は知らない。
「黒と白?何だソレ」
「誰かが青葉学園に来ているって事でしょうか?」
言葉の意味を姫達は理解出来ないでいる。
その時、ソヨとソラが部屋に入って来た。
思いっきりドアを勢いよく開けて。
「「侵入者ー!!黒い服の男と白い服の女!」」
それを聞いて一同はハッとする。
黒と白の侵入者。
つまり、この男女の事を示している。
「何でその侵入者がクラウンのデータに乱入出来たんでしょう?」
「同じ…アンドロイドとかって事はないか?」
緑は静かに呟いた。
同じアンドロイドであれば出来るかも知れない。
そう考えるのが妥当。
しかし、何の目的で来るのかが判らない。
「何で来るんだ?」
皆は悩んだ。
その瞬間、先程のソヨとソラ同様に思いっきりドアが開かれた。
一斉にその方向を見ると、黒い男に白い女の姿があった。
「なっ!」
驚く事しか出来ない。
侵入者の情報があったのはついさっきなのに、もう此処まで現れた。
「目標発見。捕捉開始」
二人はクラウンに近付いていく。
だけど、近付かせないように四葉寮の皆が立ち塞がる。
「何のつもり」
「クラウンに何の用ですか!名乗りなさい」
まずはそれを知らなくては話が進まない。
何の目的でクラウンの元へ来たのか。
誰の指示なのか。
「捕捉。アンドロイド№1、ドール=クラスト」
「同じく№2、キティ=クラスト」
それを聞き、一同は驚く。
№3のクラウンの上の者達。
№1に№2の登場。
確実に指示をしているのは創り主。