散々私を陵辱した後、武羅人はそのまま去っていった。

私を殺しもせずに。

…ようやく立ち上がる気力が戻ってきて、私はゆっくりと身を起こす。

肉体はともかく、精神はボロボロだった。

真っ直ぐに前を向いている事さえ出来ないほどの精神的ダメージ。

そしてそんな者を狙う下衆というのも、この世には確実にいる。

「梓ちゃあん?」

そんな猫撫で声と共に、私に歩み寄る影があった。

チンピラ風の数人の男達。

この渡蘭市の歓楽街を縄張りとする、雑種の亜吸血種どもだった。

「随分派手にやられちゃったみたいじゃないの、梓ちゃあん」

「……」

私は歯噛みする。

連中の目的はわかっていた。

…彼らは力も誇りもない、強者にへつらうだけの『狗』だ。

普段ならば杖縁の血族である私には決して盾突かず、刃向かう事などない。

だが今なら…武羅人に屈辱的な敗北を喫し、精神をボロボロにされた今の私なら、いいように陵辱できると考えたのだ。

武羅人が私にしたように。