「アホじゃない。ただ気付かんかっただけやし。」

否定するも男は聞く耳持たずな感じで指を指し[アホ]と言い続けている。

「私、アホなんて名前じゃありません。摩瀬美鶴輝っていう、可愛くはないかもしれないけどちゃんとした名前があるんです。」

[アホ]と何度も言われ、イライラしてきた美鶴輝は少し声が大きくなりながらも言った。

「摩瀬美鶴輝ね。じゃ、美輝って呼ぶからね。」

男は先程、[アホ]を何度も言ったことなど忘れたかのように明るく言い、美鶴輝の態度など無視して勝手に呼び方まで決めて、一人で楽しんでいる。