智一は後ろでただ黙って腕を組んで厳しい顔をしていた。

―いつもはフォローしてくれていたのに…

「…ただ、幸いにも、息子さん本人が愛美君を気に入って下さった」

―そりゃそうよ。
その為に愛美は必死だった。

当人同士は今頃デート中なんだから。

「金子社長は、慈悲深い方だ。愛美君が子を堕ろしてさえくれれば、そのまま取引を続行してくれるそうだ」

耳を疑った。

「―え、今何て…」

「子供を堕ろさせろ。そうすれば、解決だ」

―嘘でしょう?

「…そんなこと、私が承諾すると?」