「それ、どういう意味?
私はもっと下手ってこと…?」

「違うよ。そうじゃなくて…。
いつも紀紗の演奏は俺の想像を越えてるってこと。
でも…この曲を紀紗に弾いてもらうことができて本当に嬉しいよ。
ありがとう、紀紗。
最高のクリスマスプレゼントだ。」

「…わ…私こそ…ありがとう。
こんなにいい曲…プレゼントだなんて…。
私が弾くだけじゃ不釣り合いな気がしてなんだか気が引けるくらい…なんだけど…。」

「それじゃあ…もう1個、ワガママ聞いてもらってもいい?」

「え?」


俺は紀紗の答えを待たずにそっと、その左腕を引いた。
すぽっと俺の腕の中に収まる紀紗。



「悠夜!?」

「ちょっとこのままでいさせてほしい。」

「え?」

「だって…紀紗が帰って来てから…俺も紀紗もずっと忙しかったじゃん。
なかなか一緒にいられなかったし。
だから今日だけ、特別に。」


俺はそう言ってそのまま強く、紀紗を抱きしめた。