紀紗が必死に話そうとしてくれているのがすごく伝わってきた。
手が小刻みに震えている。
心なしか声も震えている気がする。


「悠夜…」

「ん…?」

「私、本当に悠夜に会えたこと、感謝してる。
悠夜がいつも側にいてくれることも、私の寂しさを失くしたいって言ってくれたことも、あの夜悠夜がくれた言葉全部、素直にすごく…嬉しかった。」

「うん。」

「でも同時にすごく混乱した。
悠夜に『好き』って言われたとき。」

「うん…。」

「悠夜が私にくれる優しさは出会ったときからずっと私に降り注いでて、私はその優しさにずっと甘えてた。」

「…。」

「その優しさが…司に似ていたから。」

「うん…。だと思ってた。」


それは分かってた。
司さんみたいな優しさを、俺の中に見ていた。
それは…紀紗の目を見ればすぐ分かった。

紀紗は時々俺を見ながら、違うところを見ていた。



「司の優しさを悠夜の優しさに重ねていたんだと思う。
だから、悠夜に好きって言われて混乱した。」