「…留学の準備とかは順調か?」

紀紗から留学の話を聞いてから、留学のことにはあまり触れなかった。
あえて触れなかったんだと思う。
だからかちょっとだけ、「留学」という言葉に紀紗の体がびくっとした。

「うん…
準備って言っても、そもそもそんなに持っていくものもないし。」

「そっか。」

「悠夜になんの相談もしなかったこと、ホントにごめんね…」

「もういいって。
紀紗なりに考えてのことじゃん。」

「やっぱり、勝手だったなって思うから。」

「留学は、いずれにしたって紀紗なら行くべきだよ。
俺だって、もし相談されてたら最初は引き留めたかもしれないけど、最終的には送り出したと思う。」

「悠夜…」

「憧れの司さんに近づける大事な一歩なんだから…
頑張んなきゃな。」

「うん…」