* * *


いつの間にか着いていた8番練習室。
俺の足は何か考え事をしながらでもここに辿り着くという能力を得てしまったらしい…。

ふぅと息を吐いて、俺はドアに手を伸ばした。



「紀紗…。」

「悠夜…。
もう来ないんじゃないかって思ってた。」

「んなこと…」

「昨日、ごめんね。
ずっと言わなくて。留学のこと。
悠夜には相談するべきだったよね…。」

「……。」

「でも、揺らぎそうだったから。」

「え…?」

「悠夜には、言わなかったんじゃないの。
言えなかったの。」

「なんで?」

「もし、本当にもし…悠夜に引き留められたら…行かない気がしたから。」

「そう…か…。」



紀紗がひとつひとつ、丁寧に言葉を選んでいる。
そして、俺の『誤解』を解いていく。