「最初はね、司のこと忘れようと思って、その楽譜を見ないふりした。
だけど、ずっと一人で部屋にいたら…なんだか家族が恋しくなったの。
そして司の楽譜に手をのばした。

あの時…初めて弾いたのに、そんな気がしなかった…。

司が側にいるような…
そんな気さえした。

…自分でも説明出来ないくらいいきなり…涙が溢れてきてね…
全然止まらなかった…
あの時…。どうしても…。」




紀紗の瞳に涙が光る。

息がつまりそうだ。

そんな顔をさせるつもりなんかなかったのに…。