行くあてがあったわけでもない私は、とにかくがむしゃらに走った。 しばらくして、走り疲れた私は立ち止まった。 サイレンも、もう聞こえてこない。 私は大きく肩で息をしながら、彼を振り返った。 彼は息も乱さずに私を見つめる。 「なんっ……ですか……?」 あまりに見つめられた恥ずかしさから、私は強い口調で言った。 だが、彼は何も言わずに視線を外し、今来た道を引き返して行く。 「あのっ!」 私はその後ろ姿に声を掛けた。