身じろぎせずにじっと見つめる私を、訝しげに見ている。 「あの、この間は、有難うございました」 そう言って頭を下げると、私のことを思い出したようだった。 その時、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。 どんどん近付いてくるサイレンを聞き、私はハッとした。 さっきの男の人が通報したのかもしれない。 しかし、彼は逃げようともしていない。 私は思わず彼へ駆け寄り、腕を掴んで走り出した。