すると壁の向こう側から
「・・・けて・・・たすけて・・・」と小さくだが、ハッキリと得体の知れない声が私の耳元に囁きかけてきた
私は恐怖のあまり
「うわぁぁぁぁー!」と声を張り上げていた。


その瞬間、
私の目の前に現れたのは天井だった。
見慣れた天井。私は混乱しながらもまわりをみわたすと、そこはNの家でもなく我が家だった。
横には彼女のSが眠っていた。しっかりと私の右腕を抱きしめてスヤスヤねむっている。
私はどうやら夢をみていたらしい。
彼女が腕を抱き締めていたために悪い夢を見ていたようだ。私はほっとしながらも、だが胸は高鳴り続けているし、喉はカラカラに乾いている。
気持ちと身体を落ち着かすようと、台所にいき水を飲もうと思った。
台所にいき右手で蛇口をひねり、左手でコップを取り出し、水をくんだ。
ぼーっとしながらも一連の動作をしながら、先ほどの夢を思い返していた。
ふと、あることに気がつき、つぶやいた。
「そういえば・・・夢でつかまれた腕、抱き締められていた腕ではなく、左腕だったような・・・」左手に持ったコップへの視線をだんだん腕にむけていき、服をめくってみると、おびただしい数の赤く腫れ上がっ爪痕がはっきりと刻まれていた。