「そろそろ出るか。暗くなっちゃうと、危ないからな。」



もうそんな時間かあ…。



倉庫から出ると、誰もいない体育館に淡い夕日が差し込んでいた。



「二人で話をしていると、時間を忘れるよな。」



先生が重い体育館の扉を開けた。



「楽しいから、あっという間なんですよね。」



先生が開けてくれた扉から外の廊下を見ると、生徒の気配もなく静かだ。



「私、カバンが教室にあるので、とって帰ります。じゃあ…先に行きますね。一緒だと誰かに見られちゃうかもしれないし…。」



「分かった。暗くなるの早いから気を付けてな。」



ポンと頭に手をのせられて、私はコクンと頷いた。



扉の前で手を振る先生に手を振り返しながら、私は教室へ戻った。



思わず笑顔になっちゃうよ…。



顔をしかめようとしても、ついつい表情が緩んでしまう。



きっと周りに生徒がいたら、“何ニヤニヤしてるんだよ”なんて突っ込まれそう。


誰もいなくて良かった…。


学校を出て、夕日が沈んでいく空を見ながら、家へと自転車を漕ぐ私は、終始笑顔のままだった。



家に帰っても、前髪に触れるとキスのことが頭に浮かんで、顔が赤くなっていた。



クラスマッチの日って、私にとって2年連続で素敵なことが起こった日だったなあ…。



ベッドに寝転がりながら、先生の姿をずっと思い浮かべていた。