英国は騒然となった。幾度も繰り返される王宮の不祥事に、国民は大きな不満と不安を抱えていた。

嫡子がいない。

嫡子に代わるべき二人の王女は、言われ無き罪を被せられて庶民に落とされた。

後継者問題の捻れは傾国の危機を招く。

そんなことは、この時代誰もが身に染みて知っている法則だった。

人々は祈った。

誰もが平穏を望んでいた。

そんな折、ついに世継ぎたるべき嫡男が誕生した。

エドワード王子である。

国王は歓喜した。

国民も安堵した。

今度こそ国王の傲慢は影を潜めると、誰もがそう願っていた。

しかし、喜びもつかの間、新たな事実が国王の耳に届けられた。

エドワード王子は、国王から感染させられた先天性梅毒に蝕まれていたのである。