舞台は十六世紀中期のイギリス王宮。英国史上もっとも多くの罪なき血が流された時代の物語だった。

時の国王ヘンリー八世には、王妃との間に生まれた娘がいた。

娘の名はメアリー。

国王は少女を溺愛した。というよりも、少女の母を溺愛した。

しかし、やがて国王の心が王妃から別の女性へと移ると、メアリーへの愛情も希薄なものへと変わっていった。

1533年、国王は一方的に王妃と離婚。同時にメアリーの地位も剥奪され、彼女は一介の庶子に落とされてしまった。

同年、メアリーの母から国王の寵愛を勝ち取ったアン・ブーリンは娘を授かる。

娘の名はエリザベス。

後の英国女王エリザベスⅠ世である。

これが再び火種を産んだ。

国王ヘンリー八世が渇望したのは、何より嫡子(男子)の誕生だった。ところが、誕生したのはまたもや女子。

この頃既にまた別の女性に心変わりを始めていた国王は、アンに国王暗殺と不義密通の容疑をかぶせ、斬首刑に処した。

こうしてエリザベスもまた、異母姉のメアリーと同様に庶子同然の身分へと落とされたのである。