すると山猫は「ごほん」と一つ咳払いをし、猫背の背中をぐんと逸らして少し得意げにこう言った。

「山猫教授と呼び給え」

「教授?」

「そうじゃ」

「店長じゃなくて?」

「そうじゃ」

山猫教授は頷いた。

僕の質問など、もうとっくにどこかへ消し飛んでしまっている風だった。

「あのレストランはただの趣味よ。こう見えてわしは西洋絵画の専門家でな」

「見えないね」

「よく言われるがの」

山猫教授は少し憮然とした顔で髭をピピピンと動かした。

どうやらあの髭はそういう気分の時にだけ動くようだった。