「お前さん、"九日間の女王"というのを知っておるかの?」

いきなり背後から声をかけられ、僕は一抹の不安を胸に振り向いた。

案の定、そこにはあの夢に出てきた山猫が後ろ手を組み、すっくと立った二本足でこちらを見上げていた。

「やっぱり」

と僕が言うと、山猫は心外だと言わんばかりに三本髭をピンピンと動かし、

「また会えたの」

と言って目元をほころばせた。

「久しぶりね、ヒッター」

シロナがふふと笑いながら言った。

どうやら、ヒッターというのがこの山猫の名前であるらしかった。

「まだ来年の絵はがきが届くには早すぎると思うよ。店長さん」

僕はため息をこぼし、僕の膝丈ほどしかない小さな山猫に訊ねてみた。