中央に絹のような真っ白いドレスを身に纏った女性が跪き、それを神父らしき人物が支えていた。

傍らに立つ男性の手には斧。

彼女の背後では、一人の女性がまるで放心してしまったかのように壁にしな垂れかかっていた。

中央に跪く女性の白く細い両腕が、目の前に置かれた小さな台を探しさ迷っている。

その表情は顔を覆う布の下に隠れ、見ることはできない。

しかし、そこに僕は、とても強い意志と、もうどうにもならないという深い悲しみを見た思いがした。


『The Execution of Lady Jane Grey』

直訳すれば、

『レディ・ジェーン・グレイの処刑』

この絵には、とても辛く悲しい物語があるような気がしてならなかった。