マスターが言っていたとおり、ナショナルギャラリーは途方もなく広かった。

何より、館内は表の喧噪が嘘のように静まり返り、遠くの咳払いや靴音までもが響くほどだった。

風景画、抽象画、デッサン、自画像、そして宗教画……

光と影。

明と暗。

色とりどりの回廊を歩くほどに、いにしえの西洋の風を感じた。

フロアーは幾つものセクションに分けられていて、十号くらいのサイズのものから見上げるほど大きなものまで、様々な絵画が展示されていた。

平日だというのに観光客も多く、どこのセクションにも人だかりができていた。

特にモネやゴッホは人気があった。

他にもピカソ、ダビンチ、ルノワール、ダリ、シャガールにモディリアニ……

早紀がいれば何日もそこを動かないんじゃないかと思えるほど、たくさんの名画と出会うことができた。