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近くのバーで軽い昼食をとった僕たちは、髭面のいかにも気のよさそうなマスターを呼び止めた。

「あれは何?」

トラファルガースクエア(広場)から目と鼻の先にある宮殿のような建物を指さしてシロナが尋ねる。

「ナショナルギャラリーだよ」

マスターは知らないのかい?と言って驚いた顔を僕たちに向けた。

「宮殿じゃないの?」

「違う違う。ベルサイユ宮殿はほら、あすこに見える大きなアーチの向こうさ」

「ベルサイユ宮殿?」

「それも知らないのか」

マスターはいよいよ呆れた顔でテーブルの僕たちを見おろした。

「怒ってるのかしら?」

シロナが僕に耳打ちする。

僕は思わず苦笑いし、「それはないと思うよ」と少し早口でシロナに返した。