老婦人の話を整理すると、だいたい次のようなことだった。

要するに、道路工事の影響で、今だけエアバスは既定の路線とは異なる道を走っているらしかった。

そしてシロナがここを見つけた。

「だから、あなた方はとてもラッキーに違いないわ」

老婦人はたっぷり三十分ほどかけて僕たちにそう説明すると、ようやくフロントに戻り、部屋を用意してくれた。

最上階(と言っても三階だが)のツインルームだった。

「ラッキーなのはあなたでしょう」

と言いかけて、僕は何とかその言葉を飲み込んだ。

「恋人?」

と老婦人が僕を見てシロナに訊ねた。

「そうよ」とシロナは実にあっさりと微笑んで見せた。

僕は小さく肩をすくめた。

『案外、僕たちは本当にラッキーなのかも知れない』

そう思っておいた方が、先々何かと楽になれるような気がした。