ビクトリア駅からキングスロードを西へと向い、幾つかの街路を抜けると、ピカデリー・ラインと呼ばれる幹線街路に出る。
その一つ、
クロムウェルロード
(Cromwel Rd.)
幹線名が示すとおり、近代ロンドンの中心であるピカデリー・サーカスに直結する主要道の一つだ。
目的のホテルは、その街路から一本入った路地にあった。
驚いたことに、シロナはホテルまでの道順を寸分違わず覚えていた。
「あれよ」
と彼女が指さした先には、かなりくたびれた白壁の建物が、銀杏並木の雑踏の中に溶け込むように佇んでいた。
「……これ?」
その三階建ての建物を見上げ、思わず僕は首を捻った。
エントランスはそこいらの民家と見紛うほどに控えめで、その脇に掲げられた青銅色のプレートに、
『ADELPHI HOTEL』
と彫り込まれた文字だけが、唯一この古ぼけた建物がれっきとしたホテルであることを証明していた。
その一つ、
クロムウェルロード
(Cromwel Rd.)
幹線名が示すとおり、近代ロンドンの中心であるピカデリー・サーカスに直結する主要道の一つだ。
目的のホテルは、その街路から一本入った路地にあった。
驚いたことに、シロナはホテルまでの道順を寸分違わず覚えていた。
「あれよ」
と彼女が指さした先には、かなりくたびれた白壁の建物が、銀杏並木の雑踏の中に溶け込むように佇んでいた。
「……これ?」
その三階建ての建物を見上げ、思わず僕は首を捻った。
エントランスはそこいらの民家と見紛うほどに控えめで、その脇に掲げられた青銅色のプレートに、
『ADELPHI HOTEL』
と彫り込まれた文字だけが、唯一この古ぼけた建物がれっきとしたホテルであることを証明していた。