「お一人かの?」

「ええ」

僕はそう言ってから、

「ああ、もう一人妹がおります」

と、自分でも可笑しくなるくらい馬鹿丁寧な口調で答えた。

まるで、賢治の童話の世界に入り込んでしまったような気分だった。

「妹様が?」

「ええ……いや、おかしいな。姉だったかも知れません」

僕は言い直し、それからもう一度ゆっくりと考え直してみた。

「ああそうだ、姉です姉です」

「確かかの?」

「ええ、確かです」

「ご両親は?」

「おりますとも。二人とも気が触れてしまいましたが」

「今はどちらに?」

「さぁ」

僕は腕組みをし、言葉を濁した。