僕はこの話を知っていた。

宮沢賢治の代表作『注文の多い料理店』の冒頭とうり二つだった。

作中、二人の猟師は扉を開けるごとに店主から注文を出され、あれよあれよという間に衣服を脱がされていくのだ。

例えばこんな具合だ。

「帽子と外套と靴をおとり下さい」

と言われれば、帽子と外套を釘にかけ、靴を脱いでぺたぺた歩いた。

するとまた扉があって、「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください」と注文される。

二人はひび切れ防止のクリームだろうと納得し、言われるがままにお互いの体にクリームを塗った。

そうして最後には、頭に酢の香水を振りかけられ、「体に塩を揉み込んで下さい」と注文されてはじめて、この店の食材が何であるかに気づき、逃げ出すのだ。

森を開拓し、自然を壊していく都会人に向けての、賢治なりの痛烈な風刺だとも言われるこの作品。

それがなぜ、突然僕の夢の中に出てきたのだろう。