シロナは眠っているようだった。

僕の右肩に頬を乗せ、静かに眠っているようだった。

『ようだった』というのは、実のところ本当に眠っているのかどうなのか、僕には判断できなかった。

耳を澄ましてみる。

何も聞こえない。

寝息も何も。

間接照明だけの機内は静まりかえり、コトリとも物音一つしなかった。

唯一、窓の外に見える紺色の雲の海と月明かりだけが、今僕達は空を飛んでいるのだということを実感させてくれた。

「……ん」

肩に寄り添ったまま、シロナが少しだけ顔を動かした。

僕は読みかけの本に栞を挟み、毛布を彼女の膝に掛け直してやった。

シロナは僕の肩に頬を寄せ、無防備な寝顔を月明かりに染めた。

確かにシロナは眠っていた。

動かせない僕の右肩が、彼女の吐息であたたかく湿った。