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シロナが現れてからというもの、僕の心は少しばかり賑やかになった。

早紀のことを考える時間も増えた。

思えば早紀は、僕にとってかけがえのない存在だった。

たった数分。

そのほんの数分の差で、僕よりも先に母さんのお腹から取り上げられたばかりに、彼女は僕の姉になった。

先だったから、早紀。

後だったから、亜斗。

その数分の差が、僕と早紀の歩む道を決定的に分けた。

『運命』という言葉を安易に使うのは好きじゃない。だけど、僕と早紀の間には、それが確かにあったに違いない。

優しくて、強くて、でもどこか脆くて、誰より可愛らしい人だった。

早紀は何かにつけて、泣き虫な僕の面倒を見てくれた。

『お姉ちゃんに任せて』

『私が守ってあげる』

『心配しないで、私は大丈夫。お姉ちゃんなんなんだから』

いつだって早紀はそう言って僕に微笑んでみせた。艶やかな長い髪をかき上げて、柔らかい瞳で僕を見上げながら。