「それで、君は何頭目になるんだい?」

「九頭目」

「そりゃまた随分増えたものだネ。今年はクジラでしたか」

「どうだったかねぇ」

「そうとも。そういや彼女は?」

「まだのようですネ」

「いやいや、ここは森の奥だ。さすがに彼女は来れないだろう」

「そうでもないサ」

「確か去年は挨拶にきたぜ」

「やぁこれはモグラさん」

「ご無沙汰ですネ」

「まったく、ご無沙汰だぜ」

「で、彼女が挨拶に来たって?」

「どうやって」

「林の奥に湖が見えているだろ?あれがどうやら海と通じているらしいぜ」

「何十キロも?」

「何十キロも」

「酔狂ですねぇ」

「ところで山猫はどうした?」