僕は道端に咲いた春紫苑を摘み取り、緋色に染まった空にかざした。

「……綺麗」

早紀は呟き、同じように朱色に照らされた僕の横顔を見て言った。

「でも、儚いね」と僕が言うと、早紀は小さく首をかしげた。

「私にはとても強く見えるわ」

「そうかな」

「そうよ」

早紀は柔らかく微笑んだ。

「だってほら、こんなにシャンと背筋を伸ばして太陽を見てるわ」

「ああ」と僕は頷いた。

「そうだね。こいつより僕たちの方がきっともっと儚いんだろうな」

「そうなの?」

「さあ」

僕は早紀の唇に口づけした。

早紀はもう「待って」とは言わなかった。

お許しが出たのだろう。

それから自転車を木陰に隠し、境内の裏で早紀を抱いた。

何度も何度も体を重ね、白濁した精を早紀の中に放った。