ある朝僕が目を覚ますと、「彼女」から届いた絵はがきは、本当にただの絵はがきになっていた。

僕の住所と「彼女」の消印。

そして、裏面に映る動物たちの姿。

彼らはもう、何も語らなかった。

尊大な態度で僕の前に現れて、意味の分からない講釈を垂れることもなかった。

これでいい。

これでいいんだと呟いて背筋を伸ばす。

窓の外に見える神戸の街は、いつもと同じようでどこか違っているような気がした。

これでいい。

これでいい。

僕は、少しずつ元の僕を取り戻しているようだった。

ただ一つ。

最後に届いた絵はがきから、シロナの姿だけが消えていて、そこには漠然と広がる深く透きとおった紺色の海だけが、どこまでもどこまでも広がっていた。