「庭に出てもいい?」

逆光の中でジェシカが言った。

僕が頷くと、少女は「押してくれる?」と言って車椅子の向きを変えた。

車いす越しに伝わる少女の体は、思っていた以上に軽かった。

眩しさに目を細める。

いつしか雨は上がり、部屋に差込んだ西日が埃一つない床を照らしていた。

一面ガラス張りの窓を開け、テラスから庭に出ると、視界いっぱいにヒースの野原が広がっていた。

「私の宝物よ」

とジェシカが言った。

赤、紅、ピンク、紫。

色とりどりの花が、見渡す限りの野原に咲き誇っていた。

一歩、二歩と踏みだし、僕はヒースの園の中で瞳を閉じた。