早紀にはそれが分かっていた。

壊れていく僕を分かっていた。

だから、死してなお早紀は僕を案じ、すべてをジェシカに託した。

なぜジェシカなのか。

それを突き詰めて考えてたところで、とても真っ当な答えを見つけることなど僕にはできないだろう。

霊能者なのか。

あるいは別の何かか。

ともかくジェシカは早紀と出会い、早紀の思いを承諾した。そして、十年の歳月を掛けて僕をこの地に導いた。

僕は、ずっと守られていたのだ。

護られながら、それでもなお無様に生き続けてきたのだ。

「なぜ……」

テーブルに両肘をつき、顔の前で組んだ両手を握りしめながら、僕は唸るような声でジェシカに尋ねた。

「なぜこんな」

「回りくどいことをって思ってる?」

少女の問いに、今度は僕が頷いた。