僕はしばし沈黙した。

ジェシカの言葉を理解するには、少しばかり頭の中を整理する必要があった。

リビングの窓に視線を移す。

曇天の空よりも暗い部屋の中に、まるで鈍い逆光のような影が幾筋も差込んでいる。

雨は、降り続いていた。

「彼女は迷っていたわ」

逆光の中で少女は続けた。

「早紀は最後まであなたのことを心配していたわ。そして私に託して行った」

「託した?」

「あなたのことをよ」

「僕のこと?」

「ええ」

ジェシカはゆっくりと車椅子を動かし、自分のカップに手を伸ばした。

「それじゃあ、あの十匹の動物たちは君の仕業なのかい?」

「そうね」

ジェシカは一瞬考え、

「そうであってそうでない。と言うのが正解かしら」と言った。