部屋は一面に窓ガラスがはめ込まれ、その向こうに裏庭が見えた。

庭の先は雨に遮られてよく見えなかったけれど、一目見てよほど広い庭園であることは見当がついた。

少女は部屋の真ん中にいた。

「どうぞ」

少女は静かな雨音の中を車椅子で移動し、円形のテーブルに僕を手招いた。

「冷めないうちに」

見れば、いつの間にかテーブルの上にカップが置かれていて、甘酸っぱいハーブティの香りが漂っていた。

「その前に何か拭くものを……」

そう言いかけた僕は、途中で言葉を飲み込んだ。

いつの間にか、僕の体は乾いていた。まるで雨などなかったかのように。

「何かお持ちしましょうか?」

「いえ」

僕はすすめられるがままにテーブルの椅子に腰を下ろし、紅茶を一口だけ飲んだ。