僕には理解できなかったけれど、なぜかそこは早紀のお気に入りの場所だった。

『ほら動いた!』

『あ、また。今度は浜風ね』

館の中に入るわけでもなく、近くの広場から風見鶏を見上げては、今の風はどっち向きだとか、風見鶏も大変ね、などと言って楽しそうに笑っていた。

僕は部屋の窓から目を逸らし、表面がカリリと仕上がるまでベーコンを焼いた。

最後に卵を落とす。

この弾力のない黄身は、きっとブロイラー産なのだろう。

それでも屋根の上でふんぞり返っているだけの鶏よりは、卵を産むだけ幾らかありがたいに違いない。

そんなことを言えば、きっと早紀は怒るのだろうけれど。

苦笑混じりにコンロの火を止めてテーブルにつくと、ほどなく二枚の皿を手にしたシロナが戻ってきた。

「お帰り」と僕は微笑んだ。

それから僕たちは遅めの朝食を済ませ、エディンバラの雑踏に足を向けた。