駅の改札を抜けた僕たちは、目の前に建ち並ぶ店舗のショーウインドウに沿って、石畳の街路を歩いた。

雑貨屋にパン屋、喫茶店、それに神戸でもよく見かけたブランド店などが軒を連ね、赤ら顔の街の人々や観光客が思い思いに買い物を楽しんでいる。

テラスでスコッチを舐める老人、民族衣装に身を包み、バグパイプを演奏する青年、手を繋ぎ寄り添う恋人達……

街並みの向こうには高い丘が見えた。

その丘の上に、ファンタジー映画にでも出てきそうな大きな城があった。

エディンバラ城だ。

城は逆光の中に建っていた。

塔の隙間に沈みかけた夕陽が、街で生きるすべての人々の営みを祝福し、暖かく見守っているようだった。

腕時計を見る。

夕刻六時十分。

旅の最後に辿り着いた街は、優しい緋色に包まれていた。