「分からない」ことが怖かった。

それがこんなに怖いことだなんて、それまで一度も気づかなかった。

彼女の気持ちが知りたかった。

ずっと愛されていたかった。

彼女の愛に、安心していたかった。

このまま何も分からないうちに、いつか彼女は僕を見限り離れていくのだろうと思えば思うほど、僕は僕に虚勢を張った。スーパーマンを演じてみせた。

それでも怖かった。

どうしようもなく僕は小さな人間で、ヒーローになどなれやしなかった。

「愛しているよ」と彼女に試した。

「私もよ」と言われれば心が静まった。

そしてまた次の日も確かめた。

「愛しているよ」と口づけを交わした。

僕は僕に自身がなかった。

愛され続ける自身がなかった。

だけど彼女を愛していた。絶対に失いたくない大切な人だった。

だから「アイシテル」を繰り返した。

次の日も、次の日も、そのまた次の日も、同じ言葉を繰り返した。