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次の日の午後、僕とシロナは再び列車に乗り込んだ。

本当であれば今朝発つ予定だったものを、突然倒れた僕を気遣ったシロナが、チェックアウトを昼まで伸ばしてもらえるようホテルに掛け合ってくれたのだ。

その間、僕はずっと眠っていた。

氷山の見える海の底を、たった一人で彷徨っていた。

冷たくて暗い。記憶という名の深い海を漂う僕の目に、やがて小さな光が見えた。

氷河の隙間を縫い、海底に差込んだたった一筋の陽の光……

すがるように手を伸ばすと、心配そうに覗き込むシロナの顔が遠くに見えた。

「ありがとう」

目を閉じたままそう言うと、暖かい雫が僕の頬に滴り落ちた。

雫は小さく弾けて耳を伝い、あとからあとから止めどなく僕の襟首を濡らした。

僕はその涙に答えるように、「大丈夫。もう大丈夫だから」と囁いて、シロナの頭を抱き寄せた。