「それでね」とシロナは言った。

「だからこそ、敢えて違う土地を選んだんじゃないかなって思うの」

「なぜ?」

「だって……」

シロナはそこで一度言葉を切り、考える素振りをしてみせた。

「あそこはジェーンの場所だから」

「ジェーンの場所?」

「そう」

「……場所、か」

僕は再び考えた。

つまり、シロナはこう言いたいのだろう。

『ブレイドゲート』

そこは誰も立ち入ることができないジェーンだけの場所で、言わば聖地なのだ。

いくらその生涯に自分を重ね、強く共鳴し惹かれたとしても、いや、だからこそ、その場所に自分が入り込むことはできない。


「……そうかも知れないな」

僕が頷いてみせると、シロナは嬉しそうに窓の外に目を向けた。