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アデルフィ・ホテルに別れを告げた僕たちは、ピカデリーサーカスの北にあるキングスクロス駅へと向かった。

別名「北の玄関口」

文字どおり、ロンドンより北の街へと向かう列車が発着する、ひときわ大きな国営鉄道の駅だった。

「よい旅を」

ホテルを出る時、フロントの老婦人はそう言って僕たちを抱擁した。

「ありがとう」

僕は最大の感謝を込めて言った。

「あなたが言ったとおり、僕たちはとてもラッキーでした」

「感謝してるわ、おば様。その花のおかげで私たちは本当の目的地を知ることができたんですもの」

シロナは老婦人の手を取った。

「元気でね、おば様」

「あなた達こそ……そうそう」

ホテルを出ようとした僕たちを、老婦人が呼び止めた。