ジェーンの処刑は、タワー・グリーンと呼ばれる塔の一室で行われた。

塔へ向かう途中、ジェーンはふと塔の中庭に目を向け、そして立ち止まった。

「あれは……」

ジェーンは声を失った。

決してもう見ることがないと諦めていたものがそこにあった。

「申し訳ありません。少しばかり探すのに苦労してしまいましてね」

と司祭が言った。

「ああ……」

敢えて目を逸らした司祭を見つめるジェーンの瞳に、大粒の涙が溢れた。

涙は頬を伝い、冷たい石の床に音もなく吸い込まれた。

ジェーンはそれを拭おうともせず、ただじっと中庭を眺め続けた。

「ありがとう、ありがとう……」と何度も何度も囁きながら。