「シロナ!」

その場から一歩も動けないまま、僕は咄嗟にシロナの名を呼んだ。

「どうしたの?」

シロナが振り向く。

それから僕の視線の先に目を遣り、あっと声を上げた。



『IANE』



目の前の壁に、唯一「彼女」を探す手掛かりだと思っていた文字が、はっきりと彫り込まれていた。

「これ……」

シロナが壁の前に屈み込み、そっとその文字を指で触れた。

「ああ」

僕もシロナの隣りに屈み込んだ。

「イアン。どういう意味かは分からないけど、間違いなく絵はがきに書かれていた文字と同じものだよ」