昨日と同じように一階でモーニングを食べ、ロビーに戻ると、例の老婦人が誰かと話し込んでいた。

「おはようございます」

と僕が挨拶すると、老婦人は「あら」と言って僕たちを手招きした。

「どうしたんです?」

「お客人様よ」

「客人?」

僕は眉をひそめた。僕に客人などあるはずもないし、第一僕の居場所を知っている人間が居るとも思えなかった。

「ええ、今モーニングを食べているわとお話ししたら、終わるまで待つとおっしゃるものですから、少しお相手を」

「そうですか」

シロナが微笑んだ。僕もつい笑みがこぼれそうになった。客人とやらはさぞかし退屈せずにすんだことだろう。

僕はその客人の背中に「どちら様ですか?」と訊ねた。

すらりと立ち上がった客人の顔に、僕はまるで見覚えがなかった。