ジェーンの即位式から四日後、メアリーを擁立した派閥が民衆を扇動し、ロンドン塔を大挙して包囲した。

さらにその四日後、ロンドン塔陥落。ジェーンは囚われの身となる。

1553年8月21日、クーデターの首謀者ジョン・ダドリーがタワーヒルで斬首刑。ジョンの野望はついえた。と同時に、ジェーンの半生ももはや風前の灯だった。

それは、右も左も分からないまま、ロンドン塔での即位式を終えて以来、在位たった九日後に迎えた悪夢だった。

ジョンは死んだ。しかし、ジェーンらに対する審決は直ちには下されず、その後半年間にわたりロンドン塔内に幽閉された。

そして迎えた翌1554年2月、父ヘンリー・グレイが処刑。

同月12日10時、ジェーンの夫ギルバート・ダドリー処刑。

そしてその一時間後、反逆の罪により、ジェーンもまた斬首刑に処せられた。

少女は何も知らなかった。

少女はただ、幸せだった幼少時代を思い、故郷ブレードゲートに帰る日が来ることだけを願い続けていた。

わずか十六歳と四か月の、ほんの短い生涯だった。