三週間後、テムズ川岸のダーラム・ハウスで両家の婚儀が執り行われた。

その式でジェーンは緑のベルベットのドレスに金欄のマントを纏い、出席した多くの参列者の熱い視線を一身に浴びた。

こんな話が残っている。

式の後、ジェーンは両親が自分を残して帰ろうとする様子に驚き、

「どうして私を置いていくの?私はブレイドゲートに帰ってはいけないの?」

と訊ねたというのだ。

姑となったダドリー婦人は呆れ果て、ジェーンの父は天を仰いだ。それほどまでにジェーンは世間を知らず、純真であった。

その年の六月、ジョン・ダドリーはエドワード国王の病床を訪問した。

目的はただ一つ。

エドワードの二人の姉メアリーとエリザベスから、次期王位継承権を剥奪する。

それさえ叶えば、必然的にその権利は先王の姪であるジェーン、すなわち我が息子の妻の元に転がり込んでくるのだ。

ジョンは懇々と説いた。

性格に鬱屈した歪みを持ち、しかも強固なカトリック教徒であるメアリーへの王位継承は、傾国の危機であると。