教室で誰かが笑っていた。

眩しい夏の陽射しの中を、入道雲がせり出していた。

先生の声が聞こえた。

僕は一人、窓の外の虹を見ていた。

たった一度しかない十五歳の夏が始まろうとしていた。

カーテンが揺れた。

バキッとシャーペンの芯が折れた。

折れた芯は虚空を彷徨い、板張りの床に音もなく落ちた。



その忌まわしき記憶は、十年経った今でも必ずシャーペンの芯で終わる。