「・・・な・・・い」

少女はかすれた小さな声で言いました。
声を出すのは久しぶりのことだったので、どう発するのかも忘れてきていました。

「ない?・・・・・・じゃ、お前の名前は?」

少年は笑いながら、しかし真剣に言います。額に当てられた銃はまだ離れません。

「・・・な・・・い」

少女はまたそう言いました。あるのかもしれませんが何年も前のことでもう覚えていません。